2023年7月3日月曜日

極私的七帝戦帯同記(2022年)①

(特に北大関係者にお詫び)

毎年部誌に掲載されていた小菅先輩の「極私的七帝戦観戦記」ですが、2023年の年明け頃に依頼があり、私が引き継ぐこととなりました。

そこから文章を作成していたものの、諸々の理由から部誌の発行には間に合わず、楽しみにされていた方々には大変申し訳ない限りです。

しかし折角の北大男女優勝の記録を没にするのはもったいないと思い、こちらにアップすることとしました。

現状も誤字脱字など修整中ですが、7/8,9の東京大会までには全て読めるような状態にします。

しかし自分で言うのも何ですが小菅先輩の心情溢れるような文章には当然及ばず、『読みたいのはこんなんじゃあないんだ』という声が多く聞こえてきそうな気はしておりますが、ご容赦いただけると幸いです。

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以下本文。導入~男子初戦(対名大)。

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極私的七帝戦帯同記


 2022年7月2日、仙台。やっと、ようやっと3年ぶりに七帝戦が開かれた。選手たちよりもむしろOBOG等関係者の方がホッとしたところがあったのではなかろうか。

 各大学ともに3年目以下は全員未経験の大会である。何よりもまず、開催にこぎつけられたことに感謝したい。また尚且つリアルタイムでの動画配信にて、例年は観戦に来られない諸先輩方でも遠くから見られることはひとつ可能性を広げたようなものと思う。

 元に戻る部分、新しく追加する要素、変わっていくことも多い世の中である。それは七帝柔道にも当て嵌まることだが、現役達の優勝を狙う気持ちの、その大元のところは恐らく不変。だからこそ我々OBOGは、彼ら彼女らを通してあのどうしようもない日々を思い出せるのだろう。入場制限があるのでしようがないことだが、何とか全国各地のOBOG達の想いが現役達に伝わってくれたらと、そう思う。

 以後は基本北大の話に留める。今年の北大は数も質も高水準の優勝候補筆頭ということで、前評判通りに優勝旗を勝ち取ってきてほしい。男子1回戦は抽選の結果、北大対名大、九大対阪大、東大対京大。


 男子初戦。北大は名古屋大と15人対11人での戦い。

 先鋒は2年目の桑村。上背はないものの身の詰まりと運動量、勘の良さが売り。対するは五鋒4年目松下。開始早々引き込む、下からの返しを狙うようだが、桑村は距離を取ってこれを防ぐ。中腰で防ぎつつ残り3分、桑村一瞬の隙に足を取られ松下を背に負う。一旦そのまま。中央に動かされ、舟漕ぎで絞めを狙われる。桑村は身を縮ませて舌を向く。松下必死の形相で桑村の首筋を狙うが、耐えきってブザー、引き分け。

 続いて次鋒戦。北大は1年目の横森、名大は六峰西村。横森には1年目で層の厚い北大陣営から15人に選ばれた実力を見せてほしい。開始の合図とともに、横森は悠々と前に出る。組手で距離を取る西村の奥襟を取り、前に崩しすぐに背を叩いた。潰したところから縦返し、そのまま横四方に抑え込む。動きに合わせて股を制すれば安定の形。30秒、一本。

 横森の2人目は七鋒4年目の奥城、自分よりもさらに大柄な相手にどう立ち向かうか。立技での真っ向勝負、互いに奥襟を取り譲らない構え。横森そのまま安定させて分けてくれ。残り3分半、遂に奥城に背中を叩かれて帯を取られてしまう。膝を止めてこれを凌ぎ立て直すが、再度奥を叩かれ払い腰、何とか耐えたところから背中に付こうとするもこれを引き剥がされ待て。時計を見る横森、残りは2分44秒、長いだろう、1年目で慣れない試合に、加えて相手は奮起の4年目、スタミナが心配だ。始め、奥襟を取られ、寄せられてから帯取返し、反応して半身で落ちるもそのまま横四方に抑えられる。どうにかもがくも崩れ上四方に移行され、一本。役割を十全に果たせたかとは言えないものの勢いの良い1年目が洗礼を浴びるのはままあるこでもある。1年目としての成果は十分。これからに期待したい。

 北大の三鋒は4年目坂田。彼は大怪我に悩まされていたが何とか間にあっってこの場に立ってくれた。傾きかけた流れを修正するのは上の務めだ、しっかりやってくれ。対してここも取らんと前に来る奥城。坂田まずは組手で十分に捌き、奥城の動きが一瞬止まった隙に引き込む、そのまま横に付こうとするも奥城これは離れて立ち、待て。再度組手争いから今度は奥襟を取られ、不純分な体勢。坂田距離を取りつつ隙をついて引き込む。一気に横に流して背中についた。坂田絞めを狙うが奥城も流石の4年目、首元の守りは固く動じることなし。坂田焦ったか弓矢絞めに入るものの奥城の右手は残ったまま、流石にこれは極めきれず、再度首筋を狙う、残り時間は3分半、まだまだじっくりで良い。左手は脇を制したものの、肝心金目の右手は守りを突破できず。残り1分40秒、状況打破を狙い再度弓矢締めに移行するも、同じ手は食わぬとばかりに回転され正対に戻される。この拍子の捕らえ方は流石4年目といったところか。坂田正対下から前三角を狙うが持ち上げられ待て。始めの合図とともに今度は奥城の展開、坂田を潰し亀に。意地のぶつかり合いだ。坂田ここは守りを固め安定を取る。奥城の縦返しを捌き切って時間。引き分け。

 分け切った後の北大四鋒には3年目國次、対するは名大中堅1年目白帯の宮城。國次はIJFルールでも全国大会に出場している好選手。悠然と礼をし、始め。宮城警戒しつつ組手で捌く形か。國次は落ち着いて右組みに取り、小外刈り一閃、宮城宙を舞い背中から落ちて一本。あまりに綺麗に投げたからだろうか、両手を離してしまっていたのは少々気になるが、消耗もなく1人抜いたのは僥倖。

 続く2人目は七将の4年目西。開始早々に小外で飛ばしたものの、西がギリギリ半身で落ちたか、今度は技有り。亀取の形になるが正対に戻され、國次は嫌って離れて待て。立技勝負が有利と見たか。始め、引き手を取られて引き込まれる、威力は無いので國次の身は残るが、西もここは流石の4年目、落ち着いて國次の動きを見つつ亀に移行。今度は上につき横三角を狙う。しかし西の守りが堅く再度離れて待て。2度目の小外も亀の形で待て。腰を引く西を振り回して払い腰、勢いは十分だったが背中をつけられず宣告は無し。組み際勝負。西が引込十字を狙うも國次ここは落ち着いて持ち上げて待て。再度払い腰で潰して亀にするも隙間をこじ開けられず離れる。投げを主体に亀取、隙があれば横三角を狙うパターン。残り2分を切ったところ一瞬左足を脇に掛けるも展開できず諦めて待て。立技狙い、残り1つ。引き込まれ正対上、片足を越えかけるもそこからが遠い。残り10秒、一瞬のスキをついて足抜きになるも決められずブザー、引き分けられる。実力的には取ってほしいところではあったが、七帝の難しさを知ってくれたことと思う。

 北大五鋒には主将4年目の澤田で、抜き役を並べ一気に勝負をつけたいところ。名大は六将3年目永田。澤田引き込むや帯を取り、下からの返しを見せつつ嫌ったところを流し亀にする。背につき襟を取れば前に動き横三角、耐えた永田の腹が空き遠藤返しに移行。このあたりは流石4年目スムースな流れ。立とうとする永田を潰しつつ、2度3度と機を伺うが中々にしぶとい。脇を差した腕を活かし逆に返す。ブリッジを越えて抑え込んだ。澤田渾身の抑えに永田まともに動けず30秒、一本。宣告後も永田立ち上がれず、恐らく肩を負傷したのだろう。仕方ないし、ままあることではあるが、人数の少ない名大にとって初戦での欠員は致命傷と思われる。

 澤田の2人目は五将4年目青山。引き込んで足を取れば青山体勢を崩し、澤田すかさず前に出て亀に固定する。まずは頭を潰し横三角の準備。残りは5分ある、十分だ。ひと呼吸おいて腕を取り一気に回せば返すことに成功。ブリッジし暴れる青山の腕を縛り、上四方に極めとる。前に出過ぎな気もするが澤田は腰付近を固定する方が得意。、腕を縛っているのも加わりしっかりと抑え切って一本。大きく息を吐く。

 3人目は四将3年目近藤。引き込んで足を掬おうとするが近藤前に出てきて噛み合わず。中腰で対応する近藤を捉えて背中を叩き、逃さぬようしっかり固定。場外際を割っても動きを止めておけば審判そのままを宣告。この辺り自分の優位な状況を確保できたところでそのままを求めるような動きは重要な技術であり、下級生はぜひとも覚えておいてほしい。よし、再開。中腰の近藤を潰そうとするも抜け出され、再度正対の攻防。中腰で一定の距離を保つ近藤を捉えようとするが中々機を見出せず。一旦立ち上がって待て。残り2分、無理をする必要はないが、さあどうする。再度引き込んで正対、澤田は基本分け狙いだろう、近藤の動きを制して残り1つ。近藤の頭が一瞬下がったところに合わせ背中を叩いた。ここからというところだったが主審は待てを宣告。

 注:現在の申し合わせ事項では立技・寝技共に場外且つ動きが継続している場合は安全のため待てを取るような流れにある。動きが連続している中でのそのままは再開時の主張の仕方で有利不利が変わる場合も多く、判断には一定の妥当性はあると言える。しかし筆者個人的にはそのままを基本としたいが、この辺り審判個々の性質に依るところであるため統一は難しい。

 閑話休題。始め、澤田組み際に内股を放つが堪えられ待て。最後に足取りを狙うも届かず、近藤に潰され亀になり時間。2人を抜いて引き分けは立派。

 北大六峰には2年目門馬。名大三将には同じく2年目の井上。まっすぐ前に出る門馬に対し井上は低い構え。立技の攻防が続く。門馬が横に振ったところ井上が崩れ前に落ちる。門馬ここは亀にして横三角、じっくり足をねじ込んでいきたい。一瞬動きが止まったところそのまま、中に移動して再開。立ち上がろうとする井上の頭から足を差し込み2番に移行、しかし潰せていない。ここは井上に立たれて待て。残り2分半。再び立技の攻防の展開。残り1つを切った。場外際で大外刈り、掛かった足を頼りに前に出て身を捻じれば払い腰、これが決まり技有、次いで副審2人の訂正で一本。ここでさらに差を広げる。

 門馬の2人目は副将、4年目の林。ここから8分、長いが何とか保って分けてきてほしい。巨躯を揺すって前に出る林、門馬は距離を取って捕まらぬよう捌く。ここで林が引き込んだ、門馬持ち上げようとしたところ両足を掴まれ倒される。前に出る林。門馬の切り返しが何とか間に合った、押し合いの攻防に持ち込み中腰に逃げる。その中腰のまま耐える門馬に対し、林は襟の手と足で崩す。身体が前に出たところを前三角に捉えられ、門馬参りを打って一本。

 北大七鋒は3年目の藤井。立って捌く。引き込まれるもすぐに離れて待て。それでいい、正対は危険だ。遠間の組手で時間を稼ぐ。場外際の引き込み。藤井すぐに上半身を切るも足が引っ掛かり転倒。猛然と追う林。すんでのところで逃れて場内を回り、状況を戻す。今のはかなり肝が冷えた。再度引き込まれ、持ち上げようとするも林の巨躯を畳から離すのは至難。そのまま場内に戻されて再開。何とか立ったが動きの中で場外際にて引き込まれる。しかしここは主審待てを宣告。こちらとしては助かった思い。ひと息つけるだろう。場内で戦うよう口頭注意があった後に始め。中央で正対、林の胴絡みに藤井は両足をハの字にして土台を構える。下で崩しにかかる林の動きに合わせ、一気に隙をつき頭に回るが抑え込めず。いやむしろこれで良い。中途半端に抑えても鉄砲を食らって逆転されるリスクが高いとみた。北大陣営からも亀のキープを指示、藤井前につき頭を潰すも、林はじりじりと前に出てくる。当然林に諦めの気配は一切ない。よくよく注意だが、藤井好機と見たか背につき絞めを狙う。だが林の対応力が上、正対に抜けられて上下逆転される。藤井胴絡みで凌ぐ形。幸い安定はしている、このまま残りひとつを終わらせてくれ。引き剥がそうとする林にしがみつき続けブザー、それまで。これは大きい引き分け。

 名大に残るは大将ひとり。4年目の小林。北大は中堅、2年目小島。体格的には同程度。だが相手は排水の陣、気を引き締めねば。小島中距離で組み手を弾くが一旦待て。主審から組み合って闘うよう口頭注意。立ち分けにおいてこの辺りの匙加減は本当に難しいものがある。始め、再開。小林の引き込み、正対下に対応しようとするも少々分が悪い。小島ここは正対下の更に下を取り外掛けを狙う。しかし未完成の内に対応され、潜られて背を取られてしまった。亀になってしまう。絞めを狙われ逃げたものの、亀の上に付かれ固定された。横三角を掛けられ、耐えたものの左腕が捕らえられている。地獄絞めとの二択を強制され、反対側の腕も掬われてしまい返される。小島顔を真っ赤にしてブリッジするも腕を縛られ、足抜きの体勢に。こうなると後は我慢するしかない、どうにか堪えてくれ。小島ぎりぎり挟んだ小林の足にしがみつく。小林は腕を縛っている優位だろう、冷静に、じっくりと事を進める。遂には引き抜かれ崩れ上四方。小島力を振り絞り身を捩るも30秒。一本。

 七将には3年目田中。開始早々引き込まれるも正対上から跳ねて捌く、圧をかけ、切り返そうとしてきた小林に競り勝ち亀にする。いいぞ、これは練習した形に入ってきている。横三角で崩してから腹を差して遠藤返しを狙う。腕が入った。しかし少々浅いか。それでも脇を差し回しにかかる、繰り返す中、返し際に小林が一気に動いた。立って逃げられかけるも田中何とかこれを潰して戻す。脇を差していたのが幸いした。一度振ったところ場外に出て、そのままを貰い場内に戻され、よし。腹を括った腕で動かし、再度脇を差して返せば遂に抑え込み。完全に決まったか小林は殆ど動けず、そのまま30秒を抑え切って一本。試合終了。

 名大11人に対し北大は8人で勝ち切り、幸先の良いスタートとなった。その他、初日を突破したのは九大、東大、東北大。この4校で優勝を争うこととなる。

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