2023年7月5日水曜日

極私的七帝戦帯同記(2022年)③

2日目、男子準決勝。

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 2日目、まずは男子準決勝が、次いで女子決勝、男子決勝の流れとなる。北大は昨日の勢いのまま、男女で優勝を得たいところ。


 まずは男子の準決勝、九大戦。

 九大には例年負けん気の強い選手が多く、相手を問わず勝負する確率が高いことが特徴である。北大の白帯スタート組との相性が良くないイメージ。技術的に勝っていても勢いに呑まれてしまい、という事例が少なくない。反面実力差があると却って御しやすい部分もあるので、結局はチームの総力として積み上げたもののが勝敗を分ける、ということは変わらない。

 第1試合場に両行のオーダーが貼り出された。北大は抜き役と分け役をバランス良く配置する王道の布陣。層の厚みを十分に機能させるのに、奇を衒ったことはしなくともよい。皆迷わず戦い抜けばよい。

 先鋒戦は2年目桑村対、九大1年目野中。桑村距離を保ち慎重な試合運び、残り4つを切ったところで亀になるもの野中に付け入る隙を与えず。1分ほど時間を使ったところで野中が諦めて離れたところで待て。再開後、桑村引き込んで下から捕らえにかかるが、ここは野中に握りを切って離れられ待て。その後も前に出る野中にチャンスを与えず、盤石の引き分け。

 次鋒戦。4年目里信対、九大2年目の原。里信中距離から組手を伺う。里信は身長の割に腕が長く、どんどん前に出た方が相手としてはやり辛いと思うのだが慎重な構え。ここは取りに行くところでないということか。確かに里信は独特の空気を持ち、4年目も彼は自由にさせているとのことだが。畳上がどうもきな臭い雰囲気に見える。つかず離れずを保ち残りは3つを切った。組み合ったところ原が担いだ。里信は一瞬背に乗せられるが何とか落ちて亀になる。上についた原に前から狙われるがこれに対処。原が一気に里信を前に引き出した。すぐさま背中に回ったときには里信の首も湧きもがら空き、そのまま片羽絞めに取られ、里信参りを打ち一本負け。ちょっとこれは予想外。九大はこの一勝に大いに湧く。

 北大の三峰は1年目横森。ここは何とか流れを取り戻したいところ。原も体格で劣るからか、ここは距離を取る。横森じっくりと間合いを詰めて背を叩く。得意の形。帯取返しを狙っていたところ原が切り返して裏投げに出る。横森もこれを投げる動きをするも制し切れてはおらず、どちらも投げたような形。主審ここは両者ポイント無しの判断。次いで早く動いたのは原。横森抑え込まれかけるもここは亀に逃げてそのまま、中央に戻される。こういう勝負所を創ってくる辺りが九大の選手の怖いところ。再開。横森前から潰される。だがここは十分耐えられるはず。軸を保った横森、じわじわと原の片足を握り動きを止め、前へと立ち互いに離れる。がまだ何も宣告されていない。横森これに先んじて気づき、背を向けた原を追う瞬間に主審が待ての宣告。七帝では自己判断は禁物である。始め、再開。再度立ち技。ゆっくりと間合いを詰めて襟を取る。原は横森の胸を突いて守りの姿勢。横森これを崩そうとするが、原の頭は下がらず。残り1つ半、原が崩れた。好機だ横森。背を取り縦返しを狙えば原向かい合うように動く。しかしここは横森の動きが早い。下になった原の背中越しに帯を取り足抜きの体勢。残り1つを切っている。上体の固定は甘いが時間がない、強引に動こうとするが抜けずブザー。引き分け。

 北大四鋒は2年目の門馬。対して九大三峰には3年目の小林。相手は白帯、且つ体格で勝る門馬としては、ここは取りたいところ。開始早々小林に引き込まれるが門馬すぐさま持ち上げて待て。引き込みに合わせて投げるつもりか。再開、際の攻防が続く。残り5つ。門馬組んだところで払い腰、しかし小林反応して腹ばいに落ちる。門馬、亀取だ。前につき横三角を狙うが、小林は身を縮こませて不動の意思表示。門馬ここで一気に勝負をかけ、小林の肘と膝を取りフライパンで返す。高々と持ち上げて返す、ここは勢いのまま固めてしまえ。門馬そのまま袈裟に固め取り、30秒抑え切って一本、これでタイに戻した。

 門馬の2人目は3年目大谷、ここがひとつ正念場だ。門馬まずは立技、組手で大谷を縫い留めて凌ぐ。よしよし、安定している。大谷引き込んで下からの展開を狙うが門馬これは耐え、しっかりと持ち上げ待て。隙の無い対応で大谷にチャンスを作らせない。流れをつくって安定、時間を使う。残り4分半、ここで大谷は巴投げを仕掛けるが門馬危なげなく反応。門馬は引き続き距離を取る。その後の正対。ここは距離を保ち、残りは1つを切った、もう少し、このまま終わらせるぞ。30秒、大谷引き込むと見せて逆技、足技を仕掛ける。やはり勝負に来たか。だが門馬これを何とか凌ぎきる。大谷に背に取られるも耐え抜いて引き分け。最後の最後は少々危うかったがきっちり仕事を果たし、安堵の帰陣。

 五鋒戦は北大4年目坂田対九大1年目竹綱。坂田開始早々に引き込めば竹綱はたまらずといった風に引きはがして逃げの一手。しかし坂田も4年目の巧みさ、逃さず袖を捉えて背中につく。立った竹綱を前に落とし亀取へ。得意の横付き。場外際から一旦そのままを貰い中央に戻れば、背につき竹綱の胴を引き延ばしてネルソン狙い。抑え・絞め・関節全方向への多面待ち。対応の遅れた竹綱、坂田その首元に右手を差し込み、弓矢絞めに移ってキリキリと絞り上げる。竹綱遂に万策尽きて参りを打ち、一本勝ち。リードを得る。

 2人目、続くは六峰2年目の内海、出来ればここも取っておきたいがどうだ。始め。組み手争いは互角の様子。出てきたばかりの内海の方が気合十分といった印象。強気の内海に組み取られ、投げを受ける。反応したものの亀にされ、坂田一転守りの展開に。内海は坂田の頭上、斜め前について隙間を作りに来る。万一の不安はあるが坂田、頼んだぞ。内海続いて召し取りへ。坂田ここはきっちりと対応。掴まれた腕はやらじと体を切る。一旦亀に戻ったが再度横付きに迫られる。ただし今回は坂田の首・脇・腕のどれも無事。場外際のため一旦そのままを掛けられ中に戻された。内海暫く横付きを起点に攻めるが残り1つに差し掛かったところ諦めて立ち上がる。始め、再開。坂田今度はうまく引き込んで内海を胴絡みに捉えれた。もう大丈夫だろう、内海のは前に出られず、時間を使いきって引き分け。戦果は十分。

 六峰は4年目の石川。九大は七鋒1年目の甲斐。石川は組むや引き込み甲斐の足を捉え、自ら足抜き下の形。しかしこれは得意の展開。石川の腕が甲斐の背を越えて反対側の襟を取った。振り子の体勢。甲斐の脇の下を潜り抜けた石川、ここからネルソンに移る。機を窺い返すが甲斐もよく反応、一気に抑え込みとはいかず。だが問題ない、こちらは依然有利、チャンスは作れているのできっちり取り切ってほしいところ。石川次は甲斐の背に取り付いて舟漕ぎ、絞めを狙う。首と脇に甲斐の注意を散らし、再びのネルソン。返して抑え込みに入るがしかし逃げられる。再度足抜き下からの展開。まだまだいける。三度ネルソン、抑え込むもまたもや逃げられる。やはり本番で必死に逃げる相手を抑えるのは困難か。最後にチャンスを作るも仕留め切れず無念の引き分け。

 北大七鋒は3年目藤井、九大は中堅、3年目梅野。まずは両者組手で様子見の展開。藤井は梅野の袖を絞り落とす。無理をしない方針だろう。対する梅野は前に出て来る。藤井組手で捌き梅野に攻め手を与えない。これは良い流れをつくれている。残り3つ、このまま終わらせて良いぞ。両袖を絞った藤井は安定、浮足立ってきた梅野。残り2つ。ここで藤井が一気に飛び込み巴投げ。決まったか。しかし梅野ぎりぎりで身体を捻り技有の判定。すぐさま切り返してきた梅野、藤井もしっかり反応して攻防のバランスを維持。再度立ち技の展開に。距離が詰まり相四つの組手。梅野乾坤一擲とばかりに跳び十字を仕掛けるが藤井反応して千切り抜けて待て。1つを切って引き続き立技。場外にて待て。残り12秒だ。最後の最後まで組手を妥協せず引き分け。

 北大中堅は3年目玉本、九大は七将1年目清水。ここも無理せずの方針か、玉本じっくりと組手を選ぶ。清水は若干遠間から仕掛け、取りに行きたいような動きを見せている。こういう時の立ち技は、まぐれの一発もあり得るのが怖い。北大としては残りメンバー的に、敢えてリスクを取ることもないだろう。玉本喧嘩四つで深追いはせず。清水が引き込んだところこれは甘い。玉本足を取り崩しにかかるが清水も反応、逃げられる。1年目でもここで即座に動けるとは、やはり九大の選手は総じて勘が良いような気がする。恐らく練習姿勢の違いと思うが、確実性を重視する北大とは違い、日々勝負するような稽古を積んでいるのだろう。勿論一長一短はあるが。玉本その後も無理はせず、安定を取る。清水は投げを狙うが距離を維持して時間を使う。残り3つを切った。玉本引き込んで清水の胴を挟む。持ち上げようとする清水の足を抱えてこれを防げば、清水の上体も落ちてきて胴絡み。片襟を取って前に揺らして状態を維持する。よしこれは安定だろう。清水はこれを突破も持ち上げることも出来ずそのまま時間。盤石と言って良い引き分け。

 双方ともに後半戦に入ったところで、北大七将は4年目石田、九大六将3年目長塚。石田組んですぐに引き込む。下からの返し狙い。長塚これを嫌って身を引くが、石田は合わせて前に出る。長塚は対応が間に合わず亀に。好機。そのまま前付きに移行し得意の遠藤返しを狙う。腹をある程度制し一旦バランスを崩しに掛かったところ不意に長塚が完全に上を向いた。恐らく石田の牽制に合わせ、長塚賭けに出たのだろうか。しかし石田の方が上手、ここは冷静に上四方に制し、抑え切ってそのまま30秒、一本。北大はリードを2人に広げる。

 石田の2人目。五将2年目の濵村、石田先ほどと同じく引き込んで正対下から返しを狙う。浜村が嫌ったところを亀にして前付きに固定。頭に座り濵村を留めて一旦様子見。そうだここはじっくりで良い。石田は腹下に差した腕で濵村を煽る。濵村反応し転回しようとするが石田は優位を崩さず。括った腹を維持し、亀に戻して再度遠藤返し。今度は濵村の上体を潰して腰を近づけ、一気に回して覆い被さり抑え込み、そのまま30秒。石田2人抜き。

 3人目は四将、4年目の新貝。新貝は白帯を巻いてはいるものの、侮って良い相手ではない。石田ここは分けを選択、両腕を突っ張り防御姿勢。少々姿勢が悪い、新貝はここで取らねばと猛攻。石田引き込んで下から固定しようと試みる。しかしここはスタミナで上回る新貝が果敢に動き、石田は亀に緊急避難。下を向く石田に新貝は頭上に陣取る。絞めを狙っている。石田は下を向いて捻じ込まれる腕に対応。下手に逃げずにここで時間を使い切る考えか。新貝の左腕が腹に入ってきた。遠藤返し狙い。少々怪しい雰囲気だが依然石田は落ち着いている。自分が使う技でもある。勘所が分かっているのだろう、確かに新貝の握る位置は浅いようだ。十分対応可能な状態のはず。体格で負けておらず、押し切られるリスクは低い。唯一の心配は2人を抜いた石田のスタミナのみだがどうか。いや問題ないはず。新貝今度は右腕を動かし、石田の脇に差して返す工程へ。石田はこれを十分に耐える。亀継続。残りは3つを切った。新貝は一旦腕を離し仕切り直す。先ほど脇を掬った右腕を若干ずらし今度は石田の首側を持ち上げる。石田の背を畳に圧しつけ抑え込みの形。すんでのタイミングで石田もブリッジ。これを脱し再び亀。新貝は勢いに乗ったか最後の足掻きか、続け様に返す動き。石田少々分が悪い形だが十分に対処しているうちにブザーが鳴り響く。リードを維持して見事生還。

 北大六将には3年目の田中、九大は三将3年目の玉重。ここは取りたいところ、引き込まれた田中は玉重の膝を割ろうとするも、胴絡みに捕らえられる。田中ここは持ち上げて待て。再開。再度胴絡みにはまるが持ち上げて待て。玉重はここで出血があったか、一旦ドクターのところへ。大きな問題は無いようだ。再開。田中はみたび引き込み際に距離を詰めてここは成功、玉重を亀にして遠藤返しを狙う。残りは4分、ここは確実に仕留めたいところ。腹に腕を差した。しかし玉重の上体は潰せていない。田中不十分ながら返して展開をつくろうとするが玉重の守りは崩れない。見ていてもどかしい。そうじゃない田中、括り位置が浅いし、それ以外でのコントロールも甘いんだ。ここはもっと時間をかけてでも、返す前の仕込みを万全にせねばならないところ。しかしこればかりは積み重ねの差。上手くはいかず。一種のチャンス、玉重の右手が不意に前に出てきた。田中これを足で捉えるが普段練習していない動きは精度が悪く、土壇場の動きの例に漏れずやはり逃げられる。胴絡みを持ち上げて待て、残りは19秒、玉重の引き込みに合わせて動くも足を越えられず時間。

 五将に4年目の澤田。対する九大は副将4年目の吉田。開始すぐ、組んだその際に吉田小外刈り。引き込みとタイミングが重なり、澤田嫌な落ち方。殆ど一本の投げだったが主審これを技有と判定。投げの勢いと引き込む勢いの合わせと判断したのだろう。北大としては思わず胸を撫で下ろすような気持ち。当の両者も主審をちらと見るが、すぐさま次の展開に移行、ここで精神的な鈍りを出さないのは流石4年目同士。澤田は正対下で時間を使い引き分けを狙う。吉田は当然立技に機を見出しており、引き上げられて待て。組み際の勝負が続く。澤田は引き込んで胴絡みを、吉田は投げを幾度となく繰り返す。見ていて肝が冷える。残り2つを切った、お互いに消耗が激しい。ここで澤田の引き込みに吉田が一手のミス。距離を取れず近くに寄ったところを澤田見逃さず、左手で吉田の膝下、道衣を握り込んで固定。吉田引き剥がしにかかるも澤田はこの左手を離さず、残った右手を背中へと伸ばし、奥襟を取り固定強化に成功。必死の表情でこれを維持し、遂にはブザー。値千金の引き分け。澤田思わず畳を打って堂々の帰還。

 さああとはひとりだ。九大の大将は1年目松永。北大は四将の2年目羽成。体格で勝っているここは無理をせず、しっかりと引き分けに行けばよい。羽成引き込んで下から松永を引き付ける。松永嫌って離れようとしたところ、これを草刈りで倒せば上下逆転。下からチャンスを狙う、篤永に対し、無理をしない距離で圧を掛ける、松永なんとか羽成を動かそうとするもここは羽成に一日の長あり。動きを見せた松永に競り勝てば、そのまま亀にしその腹に腕を差し込む。取りに行ってもよい形だがしかし浅い。田中もそうだったがそもそも第一手の腹の差し込みが甘いのだろう。位置としては一見悪く無いように見えるが、ここ一番を捉えるには不足。2度3度と返すも決定打には至らず、松永の頭上に取り付いたまま時間。結果としては十分だが、内容としては今後の糧にしてほしい。

 とは言え終われば3人残しで勝利。北川、國次、大脇と3年目3人を温存できたことは大きいだろう。男女ともに決勝へと無事にコマを進めることができた。男子の最終戦は、東大を下した地元東北大。7年前の仙台大会の決勝と同様の組み合わせ。あの時一戦を落とした結果後半にかけて雪崩のように崩れ、苦渋を飲んだことが思い出される。借りはここで返したい。 

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